寄付をしたい場合の注意点

皆さんこんにちは。

今回の記事では、寄付をしたいケースを取り上げたいと思います。あわせて、寄付をする際に注意すべき「遺留分」についても解説を加えたいと思います。

自分が亡くなった後、親族(推定相続人)はいるが、交流も薄く自分の財産を渡したいとも思っていないケースがあります。反対に、親族ではないお世話になった知人、団体(病院・施設など)に、自分の死後、何かお礼をしたいと考えている方が一定数おられます。

そのようなニーズに応えるための制度が、遺言による寄付です。遺言でお世話になった知人・団体に預貯金等の財産を渡す仕組みがあります。遺言にその旨を記載することで、ご逝去後に遺言執行者が該当の知人・団体に預貯金財産を渡すことになります。

親族とはいえ、交流が薄くなっていることも多い昨今、寄付は、自分らしい終活をするうえで有力な選択肢になり得ると思います。

その寄付ですが、注意点もありますので、以下で述べていきたいと思います。

寄付と言いますと、全財産を特定の人や団体に寄付するイメージを持たれるかもしれません。推定相続人が一人もいないおひとりさまのケースだと、本来相続する人がいないわけですから全財産を寄付しても問題はないかもしれません。

問題となるのは、親族(推定相続人)が存在する方の場合です。この場合、配偶者・子ども・父母には遺留分と呼ばれる、相続においてその人たちのために最低限確保(保障)されるべき取り分が法律によって定められています(なお、兄弟姉妹には遺留分はありませんので、もし兄弟姉妹・甥姪のみが推定相続人である場合は遺留分の配慮は必要ないということです)。

この遺留分は、とても強い権利ですので、個人の意思で無効にすることはできません。具体的な割合としては、本来その人が受け取れる法定相続分に2分の1を乗じた額が、最低限その人に渡さなければならない遺留分ということになります。また、父母のみが相続人である場合には、先ほどの2分の1ではなく3分の1を乗じた額が遺留分となります。ざっくり言いますと、本来受け取れる法定相続分の半分はほとんどのケースで保障されるということです。

では、寄付に話を戻しますと、仮にこの遺留分を無視して、全財産を知人や団体に寄付した場合考えられるのは、本来の相続人からの遺留分の請求です。これは、請求があれば必ず応じる(遺留分を支払う)必要があります。

少しイメージしていただくと、自分がお世話になった知人や団体が、寄付された財産の中から相続人に対して遺留分を支払っているイメージです。これは遺言者にとって望んでいる状態ではないと思われます。

また、こういったトラブルを避けるため、寄付を受ける団体などでは、遺留分に配慮していない遺言による寄付は受け取らないという決まりがある団体も多く存在します。

最も避けなければならないのは、全財産を団体に寄付しようとして遺言を作成したが、遺留分に配慮していなかったため団体から寄付を断られてしまった場合です。この場合、遺言者の意思に反して、本当は財産を渡したくなかった本来の相続人に全額が渡ってしまうという結果を招いてしまいます。

ここまで長々と述べてきましたが、結論は、寄付をする際は遺留分に配慮した遺言を作るということです。つまり、遺留分は(本当は渡したくない)親族にあてて確保しておくということです。心情的には納得できないことかもしれませんが、現状の制度では、遺留分に配慮した遺言を作るというのがベストだと考えております。

かめのこ行政書士事務所では、これら遺言原案作成に関する業務を行っております。ご興味を持たれた方はぜひ一度ご相談にいらしてください。出張相談も受け付けております。

それでは今回も最後までお読みいただきありがとうございました。また次の記事でお会いしましょう。

この記事を書いた人

野尻 嘉昭

千葉県松戸市を拠点に、15年以上もの間、生前整理・遺品整理の不用品回収業を営んできました。多くの方々の人生の大切な節目に関わらせていただき、その経験を通して「お身内を亡くされた方々や、おひとり様、社会的に弱い立場の方々をトータルでサポートしたい」という想いを強く持つようになりました。

そんな私がさらに手を差し伸べるために選んだのが、行政書士という国家資格です。遺言書の原案作成や相続関係業務を専門としており、相続手続きなど難しい時期のサポートをお任せください。

「遺言さえ準備していれば、紛争は避けられたかもしれない」という後悔を抱える方々の背中を、私のこれまでの経験を活かしてしっかりと支えたいと思っています。

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